歯周病で歯を失った患者さんの悲しい思い
この横浜で開業して20年弱になります。(2022年)
この間に沢山の患者さんとの出会いをさせていただきました。
その出会いのなかで、患者さんのお悩みをうかがうことがあります(それが私の仕事ですが・・・)。
そのお悩みの多くで私の心が痛むことは、歯を抜かなくてはならなくなったときの患者さんのショック、そのあと入れ歯にされたとしても「以前のように、ちゃんと噛めない」「異和感があって嫌だ」などということです。
勤務医時代にとてもステキな感じの女性Aさんが、初めて来院されました。
その方は来院される前から5年間入れ歯を使用されていたのですが、「入れ歯では、食事ができません。先生、他に噛めるようになる方法ってないのですか?」と涙ながらに訴えられました。
また、これは最近お伺いしたお話です。
入れ歯は噛むときカチカチという独特の音がどうしてもしてしまうらしいのですが、その女性の患者さんBさんは、お友達数人でお食事をされていたところ、お友達のひとりからなにげなく「Bさん、何食べているの?」と不思議そうな顔で聞かれたそうです。
Bさんは入れ歯の音だと気づき、とても恥ずかしかったそうです。
この話をされたときのBさんの表情から、その体験は今でも思い出したくない辛い経験のようでした。
歯を失ったことによるお悩みが、こんなにも普段の生活に影響を与えているなんて、歯を失ったことのない私には正直、想像することができませんでした。
何十年か前の昔の一般的な歯科医療は現在ほど、歯を残すための予防治療を頻繁におこなわず、またそれに対する啓蒙活動など活発ではなかったものです。
私も一歯科医師として反省いたし、現在では予防においても積極的に取り組んでいます。
そもそも歯を失うと、そのあとの選択肢となる主な治療法は、「入れ歯」か「ブリッジ(固定式の入れ歯)」となります。
入れ歯は、健康な歯に針金をひっかけて固定します。
固定とはいっても、入れ歯を歯ぐきの上に単にのせているだけで完全に動かないように固定しているわけではないのです。
ですので、噛んだりするとどうしても動いてしまうんです。
敏感な方だと苦痛に感じてしまいます。
だからこそ、市場では「入れ歯安定剤」などがよく売れているのです。
歯ぐきに入れ歯が当たったり、高く感じられる場合は歯科医院で調整することはできます。
しかし「以前のようにしっかり噛めない」「異和感がある」ことに関しては私がどうすることもできず、患者さんに「慣れてください」としか言えないことにジレンマを感じてしまいます。
また、ブリッジは固定式なので、以前と変りなく噛むことができます。
しかしながら、虫歯でもない健康な歯を削らなければならず、さらにブリッジの橋と歯ぐきの間に食べかすがつまりやすくなり、その削った健康な歯を虫歯になるリスクにさらしてしまい、最悪その歯も抜かなくてはならなくなる危険性までも生じてしまいます。
せっかく健康な歯なのに、その健康な歯に対して何か悪いことをしているような罪悪感を感じ、後ろめたく思ってしまっています。
インプラント治療もしていましたが、歯周病予防することでまず歯を失わない方法に重きを置くことにかじを切りました。
しかしながら、誤解していただきたくないのは、最後に治療を選択していただくのは、患者さん本人です。
私はいろいろな治療法を紹介し、それぞれの長所、欠点を説明する立場なのです。
患者さんはみなさん、それぞれ違った価値観があります。
その価値観で選択していただければいいと思っております。
ただ、「食事がおいしく、何でも食べれる」という状態は、共通してみなさん望まれていることだと思います。
そうなっていただけることが私の信念なのです(この信念を抱いて毎日の診療をおこなっております)。
想像してみて下さい。
目の前にとてもおいしいそうな食事(例えば、ジュージュー目の前で焼けているステーキ、新鮮なあわびの御刺身)があるのに、苦労して思う存分いただけない。
ついには食べるのを諦めてしまう。
このような状態を一生続けなければならないのは、苦痛ではないですか?
高級ブランド品や高級車よりも、あなたを豊かな生活に導いてくれる「お口の健康」にお金をかけることに、あなたの価値観を移行させてください。
これを最後まで読んでくださって本当にありがとうございます。
私の熱い思いが伝われば嬉しく思います。
ご不明な点、もっと詳しく聞きたいなどご要望がありましたら、何でもお気軽にお聞きください。
それにお応えできるのを楽しみにしております。